• 2月8日昨日、笹川平和財団主催の「現地ジャーナリストが見たミャンマー情勢とその行方」という講演会に行ってきた。
    http://www.spf.org/spaf-j/news/article_6610.html

    ミャンマーで唯一の外国資本によるメディア「ミャンマータイムス」のCEO兼編集長、ロス・ダンクリー氏の話だ。メディア規制が厳しいミャンマーでそれも外国人として10年ミャンマーでメディア活動続けてきた人の話で興味深かった。冒頭、ミャンマーでのビザの話から始まった。1月6日にビザの期限が切れてそれ以降発給してもらえないというのだ。ダンクリー氏曰く、これは大した問題ではない、今までこれよりずっと困難にぶつかってきたがそれらを乗り越えてきたというのだ。

    ダンクリー氏は1990年代にまずベトナムでメディア活動を始め、2000年からミャンマーで本格的に活動するようになった。3年前にはカンボジアで当地の雑誌を買収し、今では大きく成長したという。ミャンマーでは8年前から日刊紙の発刊の申請を出しているが、ずっと無視されてきた。2004年にはミャンマータイムスを一緒に立ち上げたミャンマー人の共同経営者が投獄されるということもあった。また、軍政の検閲の中で出版活動をすることで「軍政の娼婦」と避難されることもあったという。

    それだけ困難な仕事なのになぜ続けてきたかというと、規制が厳しいから止めてしまっては何も変わらない。妥協しながらでもミャンマー国内で活動を続けることに意味があるという彼の言葉だった。

    去年の選挙に関しては、かなり高く評価していた。一般のミャンマー人も自由に立候補でき、カンボジアの選挙よりミャンマーの選挙のほうが活気があったという。不正はなかったのかという質問に関しては、軍政は50%以上の当選を目指しかなりやばいことをやったが、違法行為を行ったという証拠は持っていないという。アメリカの選挙でブッシュやニクソンが行ったことを考えると単にダーティーだったと避難することはできないという。また、選挙後の国民の雰囲気が以前と変わり、新しい空気を感じるようになったという。

    欧米の経済制裁については否定的だった。経済制裁は民主化には役立たなかったし、国民の貧困化に繋がっただけだという。それに、経済制裁で中国の影響力が非常に強くなった。そういった意味で、アメリカはミャンマーの地政学的な重要性を理解していないと嘆いていた。

    軍政には、今までメディアの自由な活動についてほとんど理解してもらえなかったという。要人とのインタビューもできないし、国会の議場にも入れないという。「カンボジアのような小国でも自由に報道ができる」と言っても、軍政には取り合ってもらえなかった。「ミャンマーにはミャンマーのやり方がある」という姿勢だ。なかなか変わらないミャンマーではあるが、それでも少しずつ変わってきているという。今度の選挙もそのひとつだった。これからもそうだろう。

    他にもいろいろと興味深い話はあったが、以上がその中で印象に残った話だった。

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  • 一昨日、ヤンゴンに住むミャンマー人の友人とSkypeチャットをしていたら、急に徴兵制の話題になった。

    ミャンマー 徴兵制の導入決定(NHK)
    http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110107/k10013275631000.html

    これによると、対象者は男性は18〜45歳、女性は18〜35歳という。友人の彼は30代後半でこの年齢に引っかかっている。非常にショックのようだった。ミャンマー国内では徴兵制に関する報道がなく、この時点では噂ばかり広がっていた。

    今日のチャットでまた徴兵制の話題になった。昨日あたりからミャンマーでも報道されるようになったという。男性18〜45歳といっていたのが、35歳までになったらしい。それに、当初は失業者を優先的に徴兵するという話が出ているらしい。海外でのニュースはと探すと、ここが詳しかった。

    Military draft seen as threat to ethnic armed groups(MIZZIMA NEWS)
    http://bnionline.net/news/mizzima/10000-military-draft-seen-as-threat-to-ethnic-armed-groups.html

    ・一般の軍務の場合、男性18〜34歳、女性18〜26歳で最高2年間
    ・技術系の軍務の場合(医者、エンジニア、メカニックを含む)、男性18〜44歳、女性18〜33歳で最高3年間
    ・免除される者は、宗教関係者、主婦、その他適切でない者、recruitment central committeeから免除された者
    ・延期できる者は、公務員、学生、両親の世話をする者、薬物リハビリ中の者、囚人

    というようにここでは書かれている。ただ、「法律は全国を含むとは書かれていない。その地方の状況に依存するかもしれない」と専門家が発言している。

    徴兵制をWikipediaで調べたら、世界で67カ国というからけっこう多い。アジアでは韓国、北朝鮮、台湾、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどがそうだ。それに、ミャンマーの従来の法律には「法律上は形式的に兵役義務が規定されているものの、実質的には徴兵制度が存在しない」 と書かれていた。

    ミャンマーの場合は実際に国内で少数民族との間で戦いが行われている。友人がショックだったのも十分理解できる。

  • 2004年に失脚したキンニュンのビデオ映像がネットに流出して話題になっている。

    http://www.youtube.com/watch?v=1AVuxxCJ1S4

    1週間ほど前に突然FaceBook に流出したのが最初で、上記のYoutubeの映像はそれをBurma Todayが編集してアップしたものだ。映像は音声が入ってないので、いつ撮影したか、誰が何の目的でFace Bookに投稿したかはわからない。

    ビデオを見ると、キンニュンの自宅に軍の高官2名が訪問し、その後キンニュンと夫が車で政府のゲストハウスを思われる場所まで高官らと一緒に車で移動している。そこで和やかに話をしている様子がしばらく流れ、ビデオは終わる。

    軍事政権の中では最も「開明派」と海外から評価されていたキンニュンは、90年代の少数民族との交渉で力を発した。ただ、軍の秘密情報部のトップだったせいか国民には評判がよくない。選挙が終わった後に突然出てきたこのキンニュンの映像、何か意図があるのだろうか?

  • t-yamaさんからのコメントで、私ももう一度ミャンマーの選挙について考えてみた。

    まず、今の軍政への支持率はどうなんだろう。私も現地では軍人にずいぶんと助けてもらった。個人的にはまじめな人が多い。地元の人たちの間でも場所によって評価はいろいろだが、警察よりは軍のほうがまともだと言われる場合が多い。でも、今の軍事政権を支持する人は少ない。私が現地の人たちと話をして感じた「感覚」だと、積極的に支持しているのは数パーセント、他に受け皿がないからということで消極的支持が20%くらいじゃないだろうか。90年代は反軍政でスーチー支持が圧倒的に多かったのが、最近は軍政への消極的支持が多少ながら出てきているように感じる。

    軍人とも直接話したことは何度もあるが、軍政をどう思うなどときいてもさすがに外国人の私には正直には答えてくれない。ただ、ミャンマー人の友人の話だと、昔の同級生が軍の将校クラスに何人かいて、心情的には今の軍政を支持しないという将校も多いそうだ。

    一般の人たちは反軍政が多いが、反軍政といっても反国軍ではないようだ。軍はきらいじゃないけど、タンシュエがきらいといった感じだ。それに、1988年や2007年に軍が国民に銃を向けたという事実は消えない。しかし、このあたりの感情は地方に行くとまた違ってくる。民主化云々以前に、ビルマ族に支配されるのがいやだという話が出てくるから複雑だ。

    そんな人気のない軍政が行った今回の選挙、結果は軍政側のUSDPが圧倒的に勝ってしまった。アジ研の工藤氏による選挙結果の詳しいデータと考察がこちらにある。

    http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Asia/Radar/20101122.html

    ミャンマーの場合は軍政といっても、中国の共産党のように全国を厳しく統制するような組織力はない。ここにも書いているように、一部の地域では比較的公正な選挙が行われ、一部の地域では動員や不正があったというのが事実なんだろう。

    じゃあ、ミャンマーの選挙が欧米諸国が言うように国際的に認められないかというと微妙だ。中国や同じASEANのベトナムやラオスは選挙そのものをやってない。それでも、経済制裁しようなどとの声はどこからも上がってこない。それに、一般的には民主主義だと思われているシンガポールなどは不正選挙の見本のようなもだ。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB

    これはミャンマーの選挙よりもひどいかもしれない。でも、国際的にはどこも非難しない。世界中がダブルスタンダードになっている。
  • 選挙の集計結果が出てきた。上下両院と地方議会の全1154議席のうち以下の数字になった。

    USDP 883 Union Solidarity and Development Party(軍政側)
    NUP 63 National Unity Party (ネウィン時代の社会主義政党)
    NDF 16 National Democratic Force(NLDから分派)
    SNDP 57 han Nationalities Democratic Party(シャン族)
    RNDP 35 Rakhine Nationalities Development Party(ラカイン族)
    AMRD 16 All Mon Region Democracy Party(モン族)

    結果を見ると軍政の圧勝だが、日本でも報道されているようにかなり不正が行われたようだ。

    ということで、ヤンゴンの友人とSkypeでチャットしてみた。ミャンマー人男女で両方とも30代だ。

    私:選挙に行った?
    男:行かなかった。みんな騙された。
    私:選挙に行ったのはどれくらい?
    男:6割くらい
    私:今、おばさんの人気はどれくらい?  (注 おばさんとは、スーチーさんのこと)
    男:6割くらいかな
    私:昔よりだいぶ少なくなったな
    男:年をとってきたことと、今までは何もできなかったから
    私:4割の人はあきらめた人?
    男:何も起きないからあきらめた
    私:何も期待しない?
    男:そう
    私:おばさん以外に期待できる人は?

    男:いない

    次は女性

    私:選挙に行った?
    女:行きましたよ。
    私:NDF?
    女:もちろん。家族全員そうです。騙されると分かってましたが、入れないと後悔するので。
    私:その人は勝った?
    女:勝ちました。でも、NDF自体は負けました。選挙の前から分かっていた。
    私:USDPに入れた人はどれくらいいると思う?

    女:3割くらい。でも本気で入れた人は1割くらいでしょう。

    というチャットだった。

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