2004/10

ミャンマーの柳生一族

2004/10/29 金曜日 - 14:10:46 by 後藤 修身

ここしばらく、といってもちょっとですが、政治関係の真面目な記事を書いてきましたが、いや〜疲れます。このまま行くと、ドツボにはまりそうです。
ということで、今日はちょっと趣向を変えて、雑誌に出ている記事の紹介です。『小説すばる』にあの高野秀行さんが旅のエッセイと称して、『ミャンマーの柳生一族』という連載をやっています。あの高野さんですから、単なる「旅のエッセイ」なわけないです。柳生一族とは、今話題の軍情報局のことです。ということは、今回の政変の主役キンニュンが柳生宗矩。今回の連載の元になった旅は、高野さんが今年の5月ごろに作家の船戸与一氏とミャンマーへ行ったときの話をまとめたものですが、めちゃくちゃおもしろい。シリアスな話を独特のユーモアに包んで面白く書けるのは、この人の生まれ持ったセンスでしょう。ぜひ手にとって読んでください。生身のMIの姿があなたの隣に現れます。

スーチー氏? スーチーさん?

2004/10/27 水曜日 - 01:43:46 by 後藤 修身

私が書くミャンマー時事のタイトルには「?」がよくつきます。これは、マスメディアの報道に対して?が多いからです。
最近、新聞などでスーチー「さん」という記述が多いのが気になっています。主要新聞、通信社での記述を調べてみました。最近の記事から5本選んでいます。
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●読売新聞
  スー・チー氏・・・・1
  スー・チーさん・・・4
●朝日新聞
  スー・チー氏・・・・2
  スー・チーさん・・・1
●毎日新聞
  スーチー氏・・・・・4
  スーチー書記長・・・1
●産経新聞
  スー・チーさん・・・5
●日経新聞
  スー・チー氏・・・・1
  スー・チーさん・・・4
●共同通信
  スー・チーさん・・・5
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朝日は古い記事をすぐに削除するようで、サンプル数が3と少ないので評価から除きますが、圧倒的に「さん付け」が多いです。地方紙は共同通信などの通信社の配信をそのまま載せる場合が多いので、やはり「さん」が大勢をしめています。上記の新聞社の中で異なっているのは毎日新聞で、基本的には「氏」で統一しているようです。毎日新聞は以前「ビルマからの便り」というスーチー氏からの文章を連載してたこともあり、ミャンマーについていは他社よりたくさん報道しています。正直に言うと、毎日が「さん」を付けないというのは予想外でした。
私が「さん」が気になったのは、スーチー氏のように有名人&政治家という場合は、さん付けをしないのが普通だと思っていたからです。彼女の場合は反対政党NLDの書記長ですから、通常はスーチー書記長またはスーチー氏(女史)などが一般的表記となるはずです。なぜ彼女の場合だけ「スーチーさん」となるのでしょうか? このあたりの事情に詳しい方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。
また、「スーチーさん」の頭には、必ず「民主化指導者」「民主化運動指導者」という枕詞が付きます。
「穏健派」キンニュン首相
「強硬派」タンシュエ議長
「民主化指導者」スーチー「さん」
見事に単純化して書いています。ミャンマーの事情に疎い一般の人はこれだけで分かったつもりになるでしょう。でも実際にはずっと複雑です。枕詞を除いた形でミャンマーの政治を見る必要があります。

民主化が遠のく?

2004/10/26 火曜日 - 03:48:43 by 後藤 修身

まず、私は研究者でもジャーナリストでもないし秘密情報をもっているわけでもありません。新聞や本などでオープンになっている情報、自分の現地での経験、周りの人たちからの意見を元に書いているだけです。間違いがあるかもしれませんので、その点を留意してください。
キンニュン元首相が真の穏健派とはいえない(欧米向の一種のカモフラージュ)というのはすでに書きました。マスメディアでは、強硬派(保守派)が穏健派(改革派)を追い出した政変というように書いているところが多いですが、実際にはこうした民主化をめぐる対立などではなく、別の次元での権力闘争だと思います。たしかに民主化に対するスタンスの違いは多少はあるでしょうが、それによって両者が争うような根本的な違いがあるわけではありません。これから先、民主化がどうなるかは分かりませんが、現時点で「大きく遠のいた」と断定するのは早すぎると思います。また、今回の政変はキンニュン一派の追い落としというだけでなく、もっと大きな変動が起きているように思えます。「中国国境の街ムセなど…国防省情報局員100人以上が摘発」や、「国家情報局を解体」などが報道されているように、情報局の大幅な弱体化です。ただ、「軍情報局が廃止」などと間違った記事も見受けられますので注意は必要です。新華社の記事にあるように、国家情報局(NIB)と国防省(軍)情報局(MI)とは兄弟とはいえますが別組織です。
ここで出てきた軍情報部(MI)ですが、ネウィン独裁時代から続く軍の権力保持に多大なる力を発揮してきました。一般国民の監視という職務もありますが、軍の監視も主な職務でした。実際にクーデターを未然に防いだこともあります。情報局は軍の一部ですが、国民から見ても一般軍人から見ても特別な存在です。また、MIはエリートの集まりでもあります。スタッフは軍の中から優秀な者をリクルートしてくることが多いといいます。キンニュン自身、士官大学ではなくヤンゴン大学出身でネウィンの信任も厚く、MIの局長をやっていました。このMIを軍本体が抑えて、権限も大幅に縮小しようとしています。
【*私の勘違いでした。正確には、ヤンゴン大学中退、国軍幹部候補生学校卒です。10月27日追記】
また、解任の理由として汚職をあげていますが、キンニュン本人にはそれほど大きな汚職の噂はたっていませんでした。ただ、情報部はたしかに汚職をやりやすい立場にいます。今回、軍と情報局とで銃撃戦があったという中国国境の町、ムセ。私も2001年に行ったことがありますが、国境貿易が盛んなだけあって、汚職のネタがたくさん転がっている町です。イミグレの職員たちの間で最も行きたい地域がここムセだといわれていました。数年間ここで働くだけでかなりの財産をつくることができると噂されていました。また、軍情報局はそれを管理する位置にいて、より大きな権力を握っています。汚職が行なわれていたのは事実でしょう。対外的折衝や監視などの職務につく情報局は最も利権に近い位置にいます。実際、情報局の関与している企業がいくつかあり、同業他社ができない業務を特別に行なうことができます。軍が情報局に持っていた長年の複雑な感情、それに最近の利権の独り占めの状況を見て、反感を強めていったのではないかと推測します。
ただ、情報局がこのまま軍の圧力にだまっているだけでなく、何がしかの動きを見せる可能性もあります。何せミャンマーで一番のエリート集団ですから。また、軍が長年権力を維持できたのは情報局の力が非常に大きかったという事実があります。情報局が縮小されたらこれから軍が権力をずっと維持できるかどうかわかりません。それに、強硬派といわれているタンシュエ、マウンエイですが、今までより民主化方向の政策をとる可能性もあります。いずれにしても、90年以降膠着していたミャンマーの政治が大きく変わるのではないかと感じています。

スカイプ

2004/10/24 日曜日 - 18:40:47 by 後藤 修身

日本は地震、ミャンマーは政変と大変なことばかり起っていますが、今日はちょっと楽しい話題を。
1ヶ月ほど前に、Skype(スカイプ)というソフトをインストールしました。音声通話ソフトで、インターネットを通じてパソコン同士世界中無料で会話できるのです。音声以外でも、テキスト文字でのやりとりやファイルのやりとりもできます。となると、従来のIMソフト(インスタントメッセンジャー)、MSN MessengerやYahoo!メッセンジャーなどと変わらないように見えますが、大きな違いがひとつあります。P2Pという、ファイル交換ソフトなどで使われている技術を使っているのです。これによって従来のIMソフトだと通信できなかった状況でも簡単に接続できます。ルータやファイアーウォールがあってもほとんど問題なく通話可能です。で、ここからが肝心なところ。なんとミャンマーでも使えるのです。実際にミャンマーで使っている人がかなり(実数は不明)います。元々このソフトを紹介してくれたのも、ヤンゴンに住むミャンマー人なんです。私もヤンゴンと通話してみました(ちなみに私のところは8MのADSLです)。相手がADSL回線を使っていたら、普通の電話よりも音が良いくらいです。たまに音が途切れたり、ちょっと音声に遅延があったりしますが、実用上問題ありません。ただ、相手が普通のダイアルアップの場合はちょっと問題あり。音質は良かったのですが、頻繁に切れるし音声の遅延がかなり(秒単位?)あり、会話がちぐはぐになってしまいました。システム要件で「33.6 Kbps 以上のモデム」となっていましたから、ヤンゴンのダイアルアップ回線の状況だとちょっときびしいのかもしれません。
また、PC同士だけでなく一般の電話へも通話できます。ただしこの場合は有料です。こちらに電話料金表がありますが、ミャンマーまで0.32ユーロ/分ですから45円くらいです。ちゃんと使えるならこれは安いです。
あと、もうひとつの特長としては、見知らぬ人と話すことができることです。国名と使用言語をスカイプ上で検索すると、今スカイプで話せる状態になって人のリストが出てきます。たとえば、myanmar, japanese などと入れると何人かでてきました。そのリストへスカイプで呼び出すことができます。逆に見知らぬ人からかかってくることもあります。私はまだ見知らぬ人とは話をしたことがありませんが。
スカイプについての詳しい説明はこちらへ
Skype(公式ページ)
無料でかけられる国際電話! - [短期留学・ホームステイ]All About
Skypeやろうぜ - IKeJIWiki
無料IP電話 skypeの解説
ちなみに、私のスカイプのIDは、goto_ayeyarwady です。どうぞスカイプしてみてください。

中国は?

2004/10/23 土曜日 - 15:42:43 by 後藤 修身

今回の政変についてネットで調べてみると、極東ブログがわかりやすく偏りがなく分かりやすい記事でした。この記事では最後に中国について言及していますが、中国がらみというと毎日の社説にも出ています。でも、この記事には違和感を感じます。この社説では、ミャンマーを支援していることで中国を批判していますが、肝心なとことが抜けています。ミャンマー軍政を人権や民主化で批判するなら、中国政府に対しても同じように批判しなければいけないからです。実際にミャンマーと中国に行ったことのある人は分かると思いますが、人権や民主化という部分では両国とも似たりよったりです。活動が大幅に制限されているといえ、NLDという反対政党の存在が認められているという点では、中国より民主的かもしれません。それに、外国人旅行者の立場だけからすると、ミャンマーのほうがずっと穏やかで安全です。
この社説、もう一度読んでみると巧みに書かれているのがわかりました。「1990年の選挙結果に基づく政権移譲」という部分で軍政への批判の論拠としているのです。中国がらみの記事だから人権、民主主義といった単語を避けたんでしょうね。

キンニュンは穏健派?

2004/10/22 金曜日 - 21:38:00 by 後藤 修身

今回のキンニュン首相の解任、私も驚きました。ここ10年ばかりのミャンマーの政治的動きの中では最大のものでしょう。噂はいろいろ出てますが、実際にこれから政治がどう動くのか今のところ全く不透明です。
日本や欧米のメディアでも取り上げられていますが、各メディアは、「穏健派」キンニュン首相、「強硬派」タンシュエ議長とマウンエー副議長というような書き方をどこもしています。「穏健派」が「強硬派」に追い出されて民主化が遠くなった。というような認識で共通しています。でも、本当でしょうか?私も以前はそう思っていたのですが、「キンニュンが穏健派でマウンエイが強硬派というのはうそだ」ということをある人から聞き、なるほどと思ってしまいました。メディアの中で「穏健派」や「強硬派」といったレッテルが勝手に一人歩きし、記者の誰も疑問を持たず、枕詞のように使っているだけのように見えます。では、なぜキンニュンが穏健派と目されるようになったのか。それは、彼が対外的な窓口だったからでしょう。海外との交渉、国内での少数民族グループやNLDなどの民主化グループとの対外的交渉窓口は全てキンニュンでした。スーチー女史と会うのも職務からいうと当然です。優秀な彼は海外との交渉でも軍政の立場を上手くごまかしていたのではないでしょうか。
今回の解任劇で注目したいのは、軍情報部内で相当数が捕まっていることです。こちらの記事にも出ています。軍情報部というとミャンマーで最も強力で「優秀な」組織で、キンニュンもここのボスでした。今まで手入れする側だったのが手入れされてしまったのです。今回の政変は単なる首相一人の失脚ではありません。これからどうなるか、しばらくは様子を見るしかないようです。

ブログを始めたわけ

2004/10/22 金曜日 - 01:43:28 by 後藤 修身

エーヤーワディのサイトを始めたのが97年、最近は倦怠期なのかずいぶんと更新がストップしたままでした。これではいけないと一念発起してブログを始めることにしました。なぜ、今ごろそんな気になったか、きっかけがあります。それは19日に起きたキンニュンの失脚劇。このニュースを聞き、ミャンマーがこれから大きく変わるのではないかと思ったからです。このブログの中でこれからのミャンマーの変化する姿を書いていきたいし、そうなることを期待しています。