• キンニュンの失脚以来、比較的落ち着いていたミャンマーの政治状況だが、ここにきて軍政内部の噂が出てきた。毎日新聞の「軍政内部で異変か タイ首相が言及」によると、

    タイのタクシン首相は28日午前、報道陣に対し、ミャンマー軍事政権の内部で「緊張が高まっている」と述べ、軍政指導部内で異変が発生した可能性があるとの見方を示した。同首相はその根拠について言及していないが、「タイ政府は状況を注視していく」と話した。ヤンゴンの外交筋などは「ソーウィン首相の動向が最近、伝えられていないため、首相交代を含めた閣僚人事などが近く実施される可能性は捨てきれない」とし、事態を見守っている。

    また、海外報道 Media shows Myanmar top brass intact, deflating coup rumours では、

    先週、Bo Win Tun 中佐(マウンエーの個人秘書)が不可解な状況で死亡し、陸軍葬が行われた。ヤンゴンでは、彼は暗殺されたのでは、自殺したのでは、マウンエーを守って死んだのではなどという噂が渦巻き、政権争いの話が再び持ち上がっている。

    ソーウィン首相の動向が伝えられないという状況や、マウンエーの個人秘書(personal assistant)が死亡したことなどから、軍政内部でまた政変の動きがあるのではと注目されている。ヤンゴンでの噂だけだったらいつものことであまり信憑性はないのだが、タクシン首相が言及しているのが気にかかる。タクシン首相はミャンマー軍政とは太いパイプがあるし、去年のキンニュン失脚のときにいち早く動向を伝えたのが彼だからだ。しばらく注目したい。

  • マンダレーからラショーへ至る鉄道がある。マンダレーから一気にメイミョ(ピンウールィン)まで列車は登る。メイミョを出てチャウメに到着する前に通るのがゴッテイ鉄橋だ。鉄橋としては世界第二の高さを誇り、また100歳以上という長寿も誇る。

    1996年にマンダレーからの列車に乗り、初めて訪れて鉄橋の写真を撮った。1998年に同じく列車で通ったときには、撮影禁止だと言われ撮れなかった。3度目は2000年だった。この年はマンダレーと中国国境ムセの間を車で往復した(このときの写真文章)。いわゆる援奬ルート(ビルマ公路)である。ただ、車道とゴッテイ鉄橋は距離的にかなり離れていて写真を撮るのは不可能であった。途中、脇道に入るとゴッテイ鉄橋の近くまで下りることができるという話を聞いた。それらしき道があったので、近くの僧院で尋ねた。すると、そこの僧侶が「私についてきなさい」とすたすたと歩き始めた。あわててその後を追った。30分ほど下ると、突然目の前が広がりゲートが現れた。そこには銃を持った兵士が立っていた。軍の基地であった。私は入っていいものかどうか躊躇したが、僧侶が近づくと、兵士は手を合わせてうやうやしく頭を下げる。僧侶は二言三言その兵士に告げると、私に入ってこいと言う。銃を持った歩哨の兵士の目を見ると、うなずいていた。いやはや、さすがミャンマーである。お坊さんは絶対的である。中に入ると非番の兵士たちが集まってきた。私が日本から来たと言うと、あっという間に兵士たちに囲まれた。といっても、尋問されたわけではない。みんな外国人と話すのが初めてだから珍しくて集まってきただけだ。兵士といえど、同じ人間である。

    基地に着いたのが午後遅かったので、そろそろ日が傾いてきた。そうだ、ゴッテイ鉄橋の写真を撮りに来たんだと、最初の目的を思い出した。でも、ここの基地からは見えそうもない。兵士たちに尋ねると、兵舎の屋根から見えるという。ということで、滑りやすいトタン屋根に登ることになった。おそるおそる屋根の上に立つと、目の前の谷にゴッテイ鉄橋が姿を現した。傾いた太陽は枯れ草に残照を残し、谷は早くも暮れようとしていた。

  • 国務長官に就任予定のライス統領補佐官が18日、上院外交委員会の公聴会で発言した(毎日新聞)。その中にミャンマーにも言及した部分がある。

    証言のうち最も「新味」があったのは、世界に残っている「圧政の先陣基地」としてキューバ、ミャンマー、北朝鮮、イラン、ベラルーシ、ジンバブエを名指しし、米国は「弾圧されている国民の側に立つ」と明言した部分だ。

    ブッシュ大統領の2期目もミャンマーに対する外交姿勢は変わらないようだ。アメリカがミャンマーに対して圧力をかけるようになったのはクリントン大統領の時代からだ。当時は、「ミャンマーを中国の支配下に置くためにわざと圧力をかけた」というような陰謀論めいた噂も聞いたこともある。アメリカが経済制裁することによってミャンマーが中国を頼らざるを得ない状況にわざとしたというのだ。クリントン時代はアメリカは親中国だったので、中国のためにミャンマーを引き渡したという論だ。現在の状況を見るとその通りになっているのだが、これはいくら何でも陰謀論すぎるだろう。アメリカはミャンマーに対して、これといった経済利権や安全保障上の問題はない。アメリカにとって民主主義や人権などの大義名分を表明するのに最も適した国がミャンマーだったとうところが真実に近いのだろう。では、アジアの他の国はどうであろうか。例えば中国、民主主義や人権ではミャンマーと同じほど問題のある国であるが、経済制裁など話題にも上らない。経済的に大きな魅力があるし核兵器を保有する軍事大国だからだ。ベトナムも民主主義や人権で問題があるが、ベトナム戦争の負い目のあるアメリカはあまり強いことは言えない。パキスタンはミャンマーと同じ軍事政権であるが、アフガニスタンでの「テロとの戦い」で協力してもらっているので非難できない。ミャンマーの場合は経済的利権は少ないし、安全保障の問題もアメリカはあまり重要視していない。ただ、アメリカの対中国姿勢が変化したり、インド洋での中国の動きが活発化したら変わる可能性はある。

  • その他 20.01.2005 No Comments

    朝日とNHKの間ですごいことになっている。日本のマスメディア同士でこれだけ非難し合うというのは前代未聞である。最初はメディアへの政治の介入が争点だったのが、どうも朝日の記事がねつ造かどうかということが争点になってしまったようだ。

    実際にねつ造かどうかは別として、メディアの記事についての一般論をちょっと書きたい。新聞やテレビの取材を受けた経験のある方は分かると思うが、実際に記事になったものを見ると違和感を感じる場合が多いと思う。しかし、それはしょうがない。全てを載せるスペースもないし、インタビューを全て載せたとしても退屈なだけだ。記者というフィルターを通すことによって現実がより凝縮される。ただ、フィルターには凝縮以外にも偏向という要素もある。偏向という言葉が悪ければ個性というように言い換えてもいい。私自身、人の話を元に文章を書くときでも、その文章の主題に合うものだけピックアップしている。そうそう、もうひとつ忘れていた、面白さだ。写真を雑誌に掲載するときでも、一般読者が興味をひくセンセーショナルな写真でないとなかなか載せてもらえないということになる。

    現実を面白く偏向(個性化)して凝縮させる、こうしてメディアに流れる記事や映像が生まれる。しかし、報道に関しては偏向や興味本位は極力抑えないといけないのは当然だ。でも人間のやること、無色透明不偏不党などありえない。どの報道記事でもある程度の偏向があると思わなければいけないが、ときには偏向を通り越して嘘が入ることもある。

    有名なのは朝日の珊瑚事件だ。カメラマンが自分で珊瑚に傷を付けて撮影し、「心ないダイバーの仕業」という記事になったのだ。最終的には、朝日の社長が辞任するということになったが、このカメラマンの心情も理解できる。環境問題を訴えようという正義感と面白いものを作って注目されたいという自己顕示欲だ。この正義(観念的正義というべきか)というのが特にくせ者だ。正義と現実の間に齟齬をきたした場合は現実の方が間違っていると思う場合がある。珊瑚のカメラマンも、環境保護という大きな正義のために珊瑚を傷を付けても何も問題ないと思っていたのではないだろうか。

    そして今回の朝日の記事だ。記事自体が嘘かどうかはまだ分からないが、かなり偏向度が強いのは確かだ。朝日新聞、ここはとことんNHKとやり合って、真実は何だったのかというのを見せてほしい。

  • 1996年の9月だった。ヤンゴンのゲストハウスに泊まっていたら、「チャイティヨのゴールデンロックの写真をパンフレットで使いたいので撮ってきて」との東京からの電話が入ってきた。え~、雨期にチャイティヨ?そんなの嫌だよ。と言いたいところだったら、ぜひともと所望され受けてしまった。
    雨のチャイティヨは寒かった。濡れ鼠になっているところに冷たい風。おまけに参拝客などほとんどいない。乾期のにぎやかさからは想像もできないくらい閑散としたものだ。霧(雲)がたちこめる中、何とかまともな写真をとろうと思ったがこんな悪天候では無理だった。夜になるとライトアップされるというので、それを待つことにした。真っ暗な中、カメラと三脚を抱えて宿からゴールデンロックへ向かう。昼間より天候は悪くなり、冷たいシャワーが体を打つ。階段を上りきると、ゴールデンロックが見えた。昼間とは全く違った。ライトアップされた岩は金色に輝き、その光が雨に反射して光芒に包まれていた。

    写真を撮っていて撮影条件が悪いことは往々にしてある。でも、それはチャンスでもある。普通でない写真が撮れるからだ。ただ、こうした写真をいつ撮れるかは誰も知らない。こうして出来上がった雨のゴールデンロックの写真を見ると、風景も出会いであるというのを感じる。

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