• 中国の趙紫陽氏が重体だという(朝日新聞記事)。趙紫陽氏は89年の天安門事件のときに共産党総書記であったが、民主化派に理解があったということで失脚した。趙紫陽はこのときからずっと自宅軟禁になっている。そう、自宅軟禁というとアウンサンスーチー氏である。実は、私自身、趙紫陽が自宅軟禁になっているとは知らなかった。私が無知だから知らなかったというのが第一だが、この件ついての報道があまりされていないようだ。いろいろと探してみると、産経新聞の2004年10月の記事があった。
    89年の天安門事件以降であるから15年以上自宅軟禁が続いている。アウンサンスーチーは時々解放されているので、それよりも長い。しかし、不思議だ。アウンサンスーチーの自宅軟禁に対して多くの日本のマスコミが非難記事を書いているのに、趙紫陽の自宅軟禁に対する非難記事は目にしない。自宅軟禁はひとつの例であるが、日本政府が人権や民主化の件でミャンマー政府を非難しても中国政府を非難しない理由は分かる。人権や民主主義の原理原則だけで外交はできないのはどこの国でも同じである。しかし、マスメディアの場合はどうなんだろう。ミャンマーと中国、この二つの国に対する報道を見ていくと、マスメディアの問題がいろいろ見えてくる。

  • ミャンマーでの津波の被害については、6日の国連やWFPの発表によると、ミャンマー政府発表の数字とそれほど大きくは違わないようだ。しかしそれまでは、政府は真実を隠しているのでなないかという論調が海外のメディアに多かった。やはり、ミャンマー政府が詳しい情報をオープンにしなかったせいだろう。この件に関して、「Secrecy hinders damage assessment in Myanmar」という記事があった。その中に、

    “There’s an age-old superstition that if there’s a big natural disaster, there’s going to be a new king or a regime change,” says Stephen Dun of Seattle. “That’s one of the reasons they’re keeping a big blanket on this whole situation.”

    「大きな天災が起きると新しい王か体制に変わるという古い迷信がある。」と、シアトルのStephen Dunが述べた。「これが、今回の状況に大きく蓋をしなければいけなかったひとつの原因だ。」

    このように、ミャンマーでは天災に関する情報は今回に限らずあまり発表しない。去年の5月19日に巨大サイクロンがヤカイン州を襲い、220名の犠牲者を出した。このサイクロンは1968年以来最悪の被害だったという。New Linght of Myanmar にサイクロンの被害記事が載ったのが10日後の5月29日である。その前日5月28日には、ユニセフから緊急支援情報という日本語の情報が出ている。比べると情報量が全然違うし、New Light of Myanmar では、できるだけ被害が少なく見えるように苦労して書いているのがわかる。

    国民に重要な事実を知らせないというのは何もミャンマーだけではない。北朝鮮は論外として、中国でも表に出る報道は一部だけである。たとえば、最近各地で民衆のデモや暴動が頻発しているが、国内では報道されていない。海外へほんの少し情報が漏れてくるだけだ。ただ、天災については中国は最近、以前よりはオープンに情報を出すようになった。ミャンマー政府も天災の報道に関しては中国の真似をすべきだろう。今の時代、政府が情報を隠してもインターネットや衛星テレビで海外からの情報はどんどん入ってくる。隠しても無駄であるし、逆に国民の不信感や流言飛語を増大させるだけではないか。

  • スマトラ沖地震による津波の被害について、ミャンマー政府は相変わらずわずかな情報しか出さない。1月2日付のNew Light of Myanmar で、「59名死亡、17村の592家屋が破壊され、3,205名が家屋を失った」という簡単な内容が最後の公式発表である。

    では、実際の被害はどうなのか。
    周辺国への津波の影響を計算して可視化したページがある。これを見ると、プーケットの北部にあたる、メルギー諸島にかなりの影響があったことが分かる。今回軍政によって被害が報告されているのは、ミャンマー最南部のコータウンとイラワジデルタの河口に位置する村だ。コータウンの北にはメルギー諸島があるが、こちらの被害は全然報告されていない。また、イラワジデルタの南にはココ島というアンダマン諸島の最北部の島がある。ここにつては、12月31日付の New Light of Myanmar に記事が出ているが、「被害は軽微で、死傷者はない」という内容だ。元々この記事は、ココ島の開発のために軍と政府高官が訪問したという内容がメインである。このココ島というのは、重罪を犯した囚人のための刑務所があり、住人はほとんど政府関係者だという。また、ここには中国の海軍基地が存在するとずいぶん以前からいわれている島である。

    海外の報道だと、1月5日のロイター電「Myanmar remains tsunami news black hole」や、「Burma remains quiet on tsunami effects」などが政府の沈黙ぶりに対して論評している。ミャンマーの津波情報がブラックホールだというタイトルはずばりである。記事中に「400名以上死亡」「メルギー諸島に住むサロン族(モーケン族)の200名が犠牲」「ココ島で中国軍人の死傷者」と、亡命している反体制派からの情報が載せられている。ただ、これらの情報は確たるものではないようだ。また、「3万人の人が緊急の援助を必要としていると推測する」という国連スタッフの話がある。いずれにしても、情報不足である。

    ミャンマーでの被害は他国と比べると比較的軽かったという海外報道もある。1月4日付のロイター電「Myanmar escaped worst of tsunami – Powell」である。アメリカのパウエル国務長官がインタビューで、「衛星の写真が、ビルマの津波被害は被害の甚大な他国と比較して軽かったことを示している」という内容だ。他に、1月5日のロイター電「Burma relatively unscathed, WFP says」では、WFP(世界食糧計画)がバンコクで記者会見し、「59名死亡という政府の公式発表は適正な数字である」とある。調査はWFP、赤十字、国境なき医師団のチームで現地調査をした結果である。「最も被害が大きいのがイラワジデルタ地帯で、1万人が食料援助を必要としている」「プーケットの北にある多くの漁村は大きな被害から逃れることができた」「地質学者でない私(WFP職員)は、なぜビルマが比較的無事だったかは分からない」とある。

    また、1月5日のインターナショナルヘラルドトリビューン紙「Impact on Myanmar called minimal」でも、被害が少なかったと書いている。これは、ヤンゴン在住の国連コーディネーターへの電話インタビューを行った記事である。「国連は木曜日にミャンマーへの津波被害に関する最初の独立レポートを提出する。ミャンマーへ津波の被害は、数千人への影響と50名の死亡という、最小限の影響にとどまるという内容である。」「海外を拠点とする反体制勢力が、数千名の死傷者がいると誇張していたが、ミャンマー政府の見積りはかなり正確だった。」「南北の断層線を見ると、波がどのようにタイやスリランカそして他の国へ向かっていったか分かると、地球物理学者のBarry Hirshornが述べた。断層の方向を見て、ミャンマーよりもソマリアやケニアの政府へ警告することを心配した。」
    というような内容だ。

    今回のブログを書き始めたときには、発表されているよりもずっと被害が大きいと思っていた。実際、海外の報道ではそういう記事が多かったが、最新の報道は違ってきた。国連の調査だとミャンマー政府の数字は比較的正確だというのだ。しかし、疑問もある。メルギー諸島には多くの島があるので、短時間で人数の限られた国連が全て調べられるとは思えない。それに、ココ島などの軍事施設のある地域は調査できなかっただろう。独自で調べた地域はどのくらいなんだろうか?ただ、ミャンマーでの被害は想像されていたより少なかったことは確かなようだ。

  • あけましておめでとうございます。
    去年はこのブログにつきあっていただきありがとうございました。

    去年のキンニュン失脚とそれに伴う様々な動きも、最近はすっかり沈静化し、2005年の政治はこのまま安定化するかのように見える。今年考えられる、三つの変動要素を上げてみたい。MI弱体化の影響、2006年のASEAN議長国、中国の動向である。

    MIの現状がどうなっているか公式情報はないが、上のクラスは数千人規模で取り調べを受け、下のクラスは元の所属の軍に戻されたという噂がある。これを信じると、現状のMIはほぼ活動停止状況である。このままMIを解体する方向なのか、または新たに強力な組織を作るのか分からない。MIの存在が軍が長期支配を続けることのできた大きな要素のひとつであるので、注目したい。

    2006年にミャンマーはASEAN首脳会議の議長国に予定されている。欧米諸国はいつものように強く反対しているが、ASEAN内部でも民主化への圧力を強めようという動きがある。いずれにしても、今年中に何らかの目に見える形での民主化の動きがないと来年の議長国は難しいという見方が多い。こちらの動きも注目される。

    最後に中国。2004年はアジアの安全保障での中国の脅威が大きくクローズアップされた年だ。東南アジアは歴史的に中国の圧力をずっと受けてきた地域なので、中国への警戒心が強い。欧米の批判を受けながらもミャンマーをASEANに取り込んだのも、対中国戦略の部分が大きい。ミャンマーは中国の軍事戦略上重要な位置にある。インド洋へ抜ける道になるからだ。既にアンダマン諸島の北にあるココ島には中国の海軍基地があるといわれている。クリントンの民主党政権時代は中国融和に励んでいたアメリカであるが、ブッシュ共和党政権、特に2期目となった現在中国へは警戒心を持って対応している。日本の最近の動きもこれに連動しているものと思われる。従来、アメリカの安全保障政策では重要視していなかったミャンマーを巡る中国の動きであるが、これからアメリカが関与し始める可能性もある。その場合、アメリカの対ミャンマー政策の変化も考えられる。

    とまあ、初日から堅い話になってしまった。
    今年は政治の話以外にも楽しい話も書くようにしますので、よろしくお願いします。

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