2005/12

すごいぞ、シンガポール 〜その3

2005/12/16 金曜日 - 05:49:52 by 後藤 修身

シンガポールともゆかりのあるサマーセット・モーム。彼の作品には、熱帯によって蝕まれていく西洋が描かれている。しかし、現代のシンガポールはそうした熱帯から最も遠いところではないだろうか。
放っておくとおびただしく繁茂していく自然を莫大な労力でねじ伏せ、放っておくと無秩序に増殖する街を都市計画で押さえ、放っておくと自分勝手なことばかりやる人間を強力な罰則で管理する。できあがったのが、美しく快適で豊かなシンガポール。植民地時代の西洋人が理想としたのが今のシンガポールの姿ではないだろうか。シンガポールの住人は元々住むマレー系ではなく、外から移住してきた中国系が多くを占めるからこそ、このような人工的な国を作りあげたのだろう。それにしても、こんな国を作り上げること自体がすごい。東京23区と同じほどの面積という小さな国だったから実現できたという条件はあるが、やはりリー・クアンユーという優秀な独裁者がいたからだろう。
それにしても不思議なのが、独裁は腐敗を生み出すのが常であるがシンガポールではあまりそうした話を聞かない。私が知らないだけかもしれないが、大きな腐敗があれば国民の不満も大きくなる。民主化への動きがあまりないことイコール、腐敗が少ないということであろうか。
そうそう、ミャンマー関係の話題をひとつ。
シンガポールにはかなりの数のミャンマー人が住んでいる。ペニンシュラ・プラザというビルの3階には20軒以上のいろんな店があるがそのほとんどがミャンマー人経営の店である。東京だとミャンマー雑貨屋が数店あるが、ここでは雑貨屋ではなく電気店、マッサージ屋、旅行会社、インターネットカフェなどいろんな専門店に別れている。それだけ需要があるのだろう。正確な数字は分からないが、あるミャンマー人の話だと5万人のミャンマー人がシンガポールに住んでいるという。また、これらのミャンマー人の多くが合法的に住んでいて、オーバーステイは少ないらしい。シンガポールの政策として周辺国から優秀な学生を多く集めているという。ミャンマーからも多くの大学生が来ている。卒業後シンガポールの会社に勤める人も多い。逆に、オーバーステイには厳しい。8年ほど前に知り合いのミャンマー人がシンガポールでオーバーステイになった。すぐに捕まり、むち打ちの刑を受け強制送還になった。その鞭は非常に痛かったらしい。その彼は、二度とシンガポールには行かないと言っていた。むち打ちは別として、シンガポールのようなメリハリのある移民政策は日本も参考になるのでないだろうか。
このようなシンガポールであるが、また行きたいかと問われると微妙である。快適だけど面白みというか陰影がない。歴史、文化、民族、自然、そうしたものがすっぽりと抜け落ちている。旅行者から見ると、ミャンマーのほうがずっと面白みがある。最後に、ひとつ大事なことを書き忘れていた。シンガポールには美人が少ないのだ。街で見かけた美人はタイ人だったし、今回の結婚式でもミャンマー人出席者のほうが美人度は高かった。
シンガポール、がんばれ! と言いたいところだが、こればかりは無理そうだ。

すごいぞ、シンガポール 〜その2

2005/12/15 木曜日 - 02:42:46 by 後藤 修身

今年の夏にシンガポールに住むミャンマー人の友人が来た。東京を案内したときに、電車のホームのキオスクでジュースや食べ物を売っているのを見て驚いていた。シンガポールでは駅の構内で飲食をしたら罰金だという。その友人は山手線のホームでジュースを飲んでいる姿を記念写真に撮り、喜んでいた。で、今度は私がシンガポールの電車に乗った。社内には飲食禁止のシールが貼られていた。飲食で$500、タバコで$1,000、可燃性液体・ガスで、$5,000と書かれていた。1シンガポールドルが70円ほどだから、飲食の罰金が35,000円だ。駅の構内も電車の車内も東京よりずっときれいだし、マナーも今の日本人よりいいかもしれない。
シンガポールでは76.7%が中国系を占めている。私は昔よく中国に行ったのだが、中国人のマナーは非常に悪かった。所かまわず痰をはき、子供はどこでもしゃがみ込んでおしっこをしていた。また、順番に並ぶなどありえず、列は割り込むものであった。まあ、外国人旅行者からするとこんな中国の姿もまた面白かったのだが。そんな本家中国と比べるとシンガポールは全く違っていた。これはマナーに対しての厳格な罰金制度があるからであろうか。また、シンガポールでは麻薬に対する刑罰の厳しさでも有名だ。ついこの間もベトナム系オーストラリア人が死刑になった。1991年以来、麻薬密輸の罪などで約420人が処刑されたという。
http://cnn.co.jp/world/CNN200512020001.html
シンガポールの政府というとリー・クアンユーが有名であるが、実はこの国が未だに一党独裁だとはあまり知られていない。私も今回初めて知った。
Wikipedia のシンガポール編に簡潔に書かれている。
人民行動党の一党独裁。野党の存在は認められているが、その言論は大きく制限され、投獄や国外追放などの厳しい弾圧に晒されている。21歳以上の全国民が選挙権・被選挙権を持つ普通選挙だが、野党候補を当選させた選挙区民は、公団住宅の改装が後回しにされるなどの“懲罰”を受ける。
また、政府による選挙干渉やゲリマンダーは日常化しており、選挙は外国からの独裁批判をかわすためのお飾りの色合いを濃くしている。しかし、「政治的安定」を享受していると肯定する意見もある。
シンガポールの独裁はいわゆる開発独裁であるが、独裁という意味では、ミャンマーや中国やベトナムとあまり変わらない。ASEANの中でシンガポールがミャンマーをフォローする立場にまわることが多いのも分かる。東アジアの他の国、インドネシア、フィリピン、台湾、韓国などもちょっと前までは独裁であったが今では民主化されている。東南アジアで最も経済発展しているシンガポールが今でも一党独裁というのは不思議である。現在の繁栄を失いたくないから政治体制も現状維持がいいと感じているのだろうか。シンガポール人がどう思っているのか知りたい。
リー・クアンユーの独裁による現在の結果を見ると、ついついネウィンの独裁と比べたくなる。何がどう違って今の差になっているのだろうか。面積が全然違うし民族も歴史も違う両者を単純に比較はできないのだが、やはり共産主義を標榜し東側についたことが間違ったのだろう。最初のボタンの掛け違いである。韓国と北朝鮮の差を見てもそうだ。西側陣営のアジアの開発独裁国は、多少の問題はあるにしても結果的には多くは民主化され経済的にも繁栄している。それに、民主化されていないシンガポールや軍事政権のパキスタンなども国際的にあまり批判されない。ネウィンが引退後、ミャンマーも遅ればせながら社会主義を捨てボタンをかけ直そうとした。しかし、完全にかけ直す前に今度は中国べったりになってしまった。ますます心配だ。

すごいぞ、シンガポール 〜その1

2005/12/14 水曜日 - 07:04:27 by 後藤 修身

先週、友人の結婚式で初めてシンガポールに行ってきた。いろんな意味ですごい国だった。実質2日間の滞在だけなので、勘違いや私の無知もあるかもしれないが、思いつくまま印象を書いてみたい。
まず、異常なほど美しい。いや、美しいというよりもクリーン&合理的といったほうがいい。中心地には近代的なビルが立ち並んでいるが、街路樹などの緑もたっぷりある。また、ちょっと郊外に出ると緑だらけだ。熱帯地方の緑の生命力は強い。放っとくとそこら中覆い隠すほど茂るのだが、シンガポールの緑は植物園の緑だ。芝生は刈り込まれ、木々は剪定されている。これらの作業をしている人たちを頻繁に見かけた。
また、薄汚れたビルはほとんどなかった。近代的な真新しいビルか、パステルカラーで美しくペインティングされているものが多い。熱帯だとビルの壁面もすぐに汚れてくる。ヤンゴンのダウンタウンのビルなどはその典型だ。話を聞いたシンガポール人によると、5年に一度は壁面をペンキで塗り替えているらしい。
シンガポールには街の猥雑さなどはほとんどなかった。無秩序で毒々しいといった看板はほとんど見ないし、裏通りに入っても整然とした街並みが続き、ゴミもほとんど落ちていない。大声でケンカしているのも一度見ただけだ。シンガポールの住民の多くが中国系というのにこの整然とした雰囲気はどうしたことか。また、シンガポール人の多くは郊外の高層住宅に住む。居住地域として決められた地域に住宅用高層ビルだけが整然と並んでいる。日本のようにビルがあったり平屋があったり商店があったり工場があったり道が入り組んでいたりという町とは全然違う。町と呼ぶよりも単に居住地域と呼んだ方がよさそうだ。
私は古い街並みを見たくなって、植民地時代の建物はないか尋ねた。連れて行ってもらったのが英国植民地時代の家が建ち並ぶ一角であった。瀟洒な白い邸宅が広い緑の中にぽつんぽつんと並んでいた。どれもきれいに改築され、白く輝いていた。家は一般に貸し出されているという。これらの洋館が点在する一角は正に緑の公園である。ただ、人が住んでいるのに生活感がなかった。
最も驚いたのが、中央部の自然保護区である。シンガポールに行く前は、国中ビルだらけだろうと思っていたが全く違っていた。シンガポールの中央部には人の住んでいない広大な熱帯の森が広がっているのだ。それは、貯水池の水源保護の役割も果たしている。ただ熱帯の森といっても、マラリア蚊が蔓延したりヒルが頭上から降ってくるということはない。それでも、1930年代までこの森にトラが住んでいたという。森の中には散策用の整備された歩道もいくつかある。街の中心から車で20〜30分も走ればこの森の入り口に到着する。
シンガポールのことを公園都市と呼ぶらしいが、ぴったりの言葉だ。国全体がきれいに整備された公園である。緑は繁殖しすぎないように常に手を施され、建物も黒ずまないよう常に化粧される。見事な都市計画の結果であり、それを維持するのに多大な労力をかけ続けている。
ということで、続きは明日以降に。