「ミャンマー こんなとき何て言う?」

ビルマ語(ミャンマー語),

8年ほど前、土橋先生とナガに一緒に行ったとき、

「ンガーの発音をもう一度」

と、私のビルマ語の発音にダメ出しされた。数字の5も魚も ンガー なのでビルマ語ではよく出てくる発音だ。ンガー、ンガー、ンガーと反復練習をしながらナガの山道を私は歩いた。ちょっと息が苦しいときのほうが、このンガーの発音はうまくいく。いつもは優しい土橋先生だが、ビルマ語の発音には厳しかった。

戦後日本人として初めてミャンマーに留学したのが土橋先生だ。それも「ビルマ政府の国費留学生」だ。そんな土橋先生が最近出したのが、「ミャンマー こんなとき何て言う?」というこの語学本だ。この本は他の語学学習書にない特徴がふたつある。

「ミャンマー こんなとき何て言う?」
「ミャンマー こんなとき何て言う?」

ひとつは発音用の文字。一般的には、発音記号, ローマ字, カタカナ などで書いている本が多いが、この本ではできるだけ本物の発音ができるようにカタカナに工夫している。カタカナ版発音記号だ。たとえば、「どこへ行くの?」は、「ベート゜ゥワー:マレ゜ー」だ。この変なカタカナが正確な発音のキモになる。普通のカタカナやローマ字だと正確な発音は表記できないし、一般的な発音記号だと、日本人には親しみにくい。それで生まれたのが、この変なカタカナだ。ちなみに私が苦労したンガーは「ガー:」だ。これで私もちゃんと発音できそうだ。

もうひとつは、説明が非常に丁寧で本当の授業を受けているかのように感じる。一般的な語学書だと、例文があって解説、例文があって解説・・・・眠くなってしまう。でも、この本だと、例文があって、それにまつわる説明、いや、話が始まる。「おかず」からミャンマー料理の作り方にまで話が広がったり、「遊びに来てください」からミャンマーと日本の比較文化論的な話に広がったりする。本当の授業を受けているようで退屈しない。

【目次】

まえがき

I はじめに
1 ミャンマ一語って?
2 基本文字と発音
3 母音、声調、鼻音について
4 身近なミャンマ一語

II あいさつ
5 最初のことばは?
6 返事の仕方は?
7 さようなら
8 よびかけは?

III 基本文型
9 ご飯を召し上がれ
10 ご飯たべますか?
11 ご飯を食べないで
12 おかずのいろいろ
13 おいしい!
14 食卓のマナー
15 もったいない
16 好きです
17 飲み物、おやつ

IV 市場で買い物
18 楽しい市場歩き
19 買い物をする

V 空港で、ホテルで
20 空港に着きました
21 ホテルに着いたら
22 身体の具合が
23 おみやげを買う

VI より深く知るために
24 お祭り好き
25 相手への気づかい
26 慶弔のことば
27 便利なことわざ
28 祈念のことば
29 ミャンマーの古い詩

【附録1】おもな助詞一覧表
【附録2】おもな助動調一覧表
【附録3】方角・序数調・曜日など
【附録4】こんな言葉も(単語集補足)
【附録5】ミャンマ一語単語集

「III 基本文型」の例文は全て食べ物に関するもの。やはり、何でも基本は食べるだ。これなら興味を失わずに基本文型を身につけることができる。その上、読み終わったらミャンマー料理を作れるようになる。

私が気に入ったのが、【附録1,2】の助詞と助動詞の説明だ。ビルマ語と日本語は文法が似ていて、日本語の助詞や助動詞にあたるものがある。これを理解すると自分でいろんなビルマ語の言い回しがわかるようになる。初心者向けの語学書では助詞、助動詞を解説している本はあまりないので、これは貴重だ。

ということで、お勧めのビルマ語学習書が増えた。他に私が持っている本の中で他にお勧めの語学本は、「エクスプレス ビルマ語」「現代ビルマ語入門」「旅の指さし会話帳 ミャンマー」だ。ただし、現代ビルマ語入門は絶版。ビルマ語関係の語学本も辞書もいろいろと持っているが、私のビルマ語はなかなか上達しない。

ところで、この本の中にミャンマーの写真がたくさん載っている。実はこれらの写真は私の写真だ。モノクロで小さな写真だが、ミャンマーの雰囲気が多少でも感じてもらえればと思う。

もちろん、私の写真があってもなくてもこの本はお勧めです。