実際の津波被害は?

ミャンマー時事

スマトラ沖地震による津波の被害について、ミャンマー政府は相変わらずわずかな情報しか出さない。1月2日付のNew Light of Myanmar で、「59名死亡、17村の592家屋が破壊され、3,205名が家屋を失った」という簡単な内容が最後の公式発表である。

では、実際の被害はどうなのか。
周辺国への津波の影響を計算して可視化したページがある。これを見ると、プーケットの北部にあたる、メルギー諸島にかなりの影響があったことが分かる。今回軍政によって被害が報告されているのは、ミャンマー最南部のコータウンとイラワジデルタの河口に位置する村だ。コータウンの北にはメルギー諸島があるが、こちらの被害は全然報告されていない。また、イラワジデルタの南にはココ島というアンダマン諸島の最北部の島がある。ここにつては、12月31日付の New Light of Myanmar に記事が出ているが、「被害は軽微で、死傷者はない」という内容だ。元々この記事は、ココ島の開発のために軍と政府高官が訪問したという内容がメインである。このココ島というのは、重罪を犯した囚人のための刑務所があり、住人はほとんど政府関係者だという。また、ここには中国の海軍基地が存在するとずいぶん以前からいわれている島である。

海外の報道だと、1月5日のロイター電「Myanmar remains tsunami news black hole」や、「Burma remains quiet on tsunami effects」などが政府の沈黙ぶりに対して論評している。ミャンマーの津波情報がブラックホールだというタイトルはずばりである。記事中に「400名以上死亡」「メルギー諸島に住むサロン族(モーケン族)の200名が犠牲」「ココ島で中国軍人の死傷者」と、亡命している反体制派からの情報が載せられている。ただ、これらの情報は確たるものではないようだ。また、「3万人の人が緊急の援助を必要としていると推測する」という国連スタッフの話がある。いずれにしても、情報不足である。

ミャンマーでの被害は他国と比べると比較的軽かったという海外報道もある。1月4日付のロイター電「Myanmar escaped worst of tsunami – Powell」である。アメリカのパウエル国務長官がインタビューで、「衛星の写真が、ビルマの津波被害は被害の甚大な他国と比較して軽かったことを示している」という内容だ。他に、1月5日のロイター電「Burma relatively unscathed, WFP says」では、WFP(世界食糧計画)がバンコクで記者会見し、「59名死亡という政府の公式発表は適正な数字である」とある。調査はWFP、赤十字、国境なき医師団のチームで現地調査をした結果である。「最も被害が大きいのがイラワジデルタ地帯で、1万人が食料援助を必要としている」「プーケットの北にある多くの漁村は大きな被害から逃れることができた」「地質学者でない私(WFP職員)は、なぜビルマが比較的無事だったかは分からない」とある。

また、1月5日のインターナショナルヘラルドトリビューン紙「Impact on Myanmar called minimal」でも、被害が少なかったと書いている。これは、ヤンゴン在住の国連コーディネーターへの電話インタビューを行った記事である。「国連は木曜日にミャンマーへの津波被害に関する最初の独立レポートを提出する。ミャンマーへ津波の被害は、数千人への影響と50名の死亡という、最小限の影響にとどまるという内容である。」「海外を拠点とする反体制勢力が、数千名の死傷者がいると誇張していたが、ミャンマー政府の見積りはかなり正確だった。」「南北の断層線を見ると、波がどのようにタイやスリランカそして他の国へ向かっていったか分かると、地球物理学者のBarry Hirshornが述べた。断層の方向を見て、ミャンマーよりもソマリアやケニアの政府へ警告することを心配した。」
というような内容だ。

今回のブログを書き始めたときには、発表されているよりもずっと被害が大きいと思っていた。実際、海外の報道ではそういう記事が多かったが、最新の報道は違ってきた。国連の調査だとミャンマー政府の数字は比較的正確だというのだ。しかし、疑問もある。メルギー諸島には多くの島があるので、短時間で人数の限られた国連が全て調べられるとは思えない。それに、ココ島などの軍事施設のある地域は調査できなかっただろう。独自で調べた地域はどのくらいなんだろうか?ただ、ミャンマーでの被害は想像されていたより少なかったことは確かなようだ。