中国の反日デモと60年代のヤンゴン

ミャンマー絡み

1ヶ月ぶりの更新になってしまったが、ご容赦を。
最近の中国での反日デモを見ていて、60年代のヤンゴンで起きたある事件が頭に浮かんだ。

1967年にヤンゴンでビルマ人群衆が中国系の学校や商店を襲い、死者まで出た事件である。その当時、文化大革命の影響でビルマ在住の中国人の間にも毛思想が広がり、毛沢東バッチ、毛沢東語録、中国宣伝ビラなどが配られるようになった。毛思想の進入を恐れたビルマ政府は、毛沢東バッチ禁止令を出した。これに対して、毛思想に染まった一部の中国人たちが反禁止令デモを行い、当局と衝突するようになった。エスカレートした中国人デモ隊がアウンサンやネウィンの写真を破り捨てるという行動から、ついに一般ビルマ人たちの間と衝突した。ビルマ人暴徒は、大使館、華僑系商店、中国人住宅を次々に襲い、最後には華僑教師連合会館を襲撃し中国人教師多数を虐殺するまでに至る。その後、戒厳令により平静を取り戻した。

この事件について、「当時の米不足に対する国民の不満のはけ口として、政府は暴動を黙認した」という風説がある。この年は米不足によりビルマ各地で「米よこせ暴動」が頻発していた。事実、ビルマ人の反中国デモに対して、警察も軍も当初は全く規制しなかった。また、政府側が暴徒に正確な中国人居住地図を渡していたという噂もある。62年に登場したネウィン政権はビルマ式社会主義という民族主義路線を押し進めていた。当時高揚していたナショナリズムと、元々ビルマ人たちの間にある反中国感情を政府がうまく利用したというのである。

以上は、佐久間平喜氏による「ビルマに暮らして」を参考にした。

今回の中国の反日デモでも、取り締まりをしない当局、ナショナリズムを煽る中国政府、国民の反日感情、農村部で頻発する暴動と、67年のヤンゴンでの反中国人暴動と似ている。報道でも指摘されいるように、当局がコントロールしているのは間違いないだろう。ヤンゴンでの暴動は戒厳令で収まったが、中国の反日デモは終息するのだろうか。もしかして、共産党崩壊の始まりを我々は見ているのかもしれない。