マスメディア、現実と偏向と嘘

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朝日とNHKの間ですごいことになっている。日本のマスメディア同士でこれだけ非難し合うというのは前代未聞である。最初はメディアへの政治の介入が争点だったのが、どうも朝日の記事がねつ造かどうかということが争点になってしまったようだ。

実際にねつ造かどうかは別として、メディアの記事についての一般論をちょっと書きたい。新聞やテレビの取材を受けた経験のある方は分かると思うが、実際に記事になったものを見ると違和感を感じる場合が多いと思う。しかし、それはしょうがない。全てを載せるスペースもないし、インタビューを全て載せたとしても退屈なだけだ。記者というフィルターを通すことによって現実がより凝縮される。ただ、フィルターには凝縮以外にも偏向という要素もある。偏向という言葉が悪ければ個性というように言い換えてもいい。私自身、人の話を元に文章を書くときでも、その文章の主題に合うものだけピックアップしている。そうそう、もうひとつ忘れていた、面白さだ。写真を雑誌に掲載するときでも、一般読者が興味をひくセンセーショナルな写真でないとなかなか載せてもらえないということになる。

現実を面白く偏向(個性化)して凝縮させる、こうしてメディアに流れる記事や映像が生まれる。しかし、報道に関しては偏向や興味本位は極力抑えないといけないのは当然だ。でも人間のやること、無色透明不偏不党などありえない。どの報道記事でもある程度の偏向があると思わなければいけないが、ときには偏向を通り越して嘘が入ることもある。

有名なのは朝日の珊瑚事件だ。カメラマンが自分で珊瑚に傷を付けて撮影し、「心ないダイバーの仕業」という記事になったのだ。最終的には、朝日の社長が辞任するということになったが、このカメラマンの心情も理解できる。環境問題を訴えようという正義感と面白いものを作って注目されたいという自己顕示欲だ。この正義(観念的正義というべきか)というのが特にくせ者だ。正義と現実の間に齟齬をきたした場合は現実の方が間違っていると思う場合がある。珊瑚のカメラマンも、環境保護という大きな正義のために珊瑚を傷を付けても何も問題ないと思っていたのではないだろうか。

そして今回の朝日の記事だ。記事自体が嘘かどうかはまだ分からないが、かなり偏向度が強いのは確かだ。朝日新聞、ここはとことんNHKとやり合って、真実は何だったのかというのを見せてほしい。

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Posted by 後藤 修身